経費が税務調査で否認されたときの対応と回避策 -貸付金処理という選択肢について

経費として計上していた支出が、税務調査で否認された場合、どのような問題が起き、どのような対処方法が考えられるのか。本記事では、高校生にも理解できるように、ある事例をもとに丁寧に解説していく。


経費が否認されたある事例

ある社長は、3つの会社を経営しており、月に5回、1回あたり約20万円の飲食代を「会社の経費」として計上していた。しかし、税務調査により、その飲食費が個人的な支出であると判断され、経費として認められなかった。否認された金額は合計で6600万円に達していた。


通常の処理:役員賞与として扱われた場合

経費として認められなかった支出は、通常「役員賞与」として扱われる。役員賞与は、原則として会社の経費にはならず、役員の個人所得とみなされる。このため、以下の2つの税金が発生する:

  • 社長個人に対して所得税・住民税が課税される(最高税率で約55%)。この場合、約3,630万円の税金が発生する。
  • 会社側も、経費として処理していたものが認められなかったため、約2,200万円の法人税が追加で発生する。

また、この場合には「追徴課税」や「重加算税」といった追加の税金がかかることがある。これらは、脱税や意図的な隠ぺいがあったと判断された場合に課される。

  • 延滞税:約14.6%(年率・遅れた日数に応じて計算)
  • 重加算税:最大で本来納めるべき税額の35%(悪質と判断された場合)

この事例で仮に重加算税が適用されたとすると、

  • 所得税側:約3,630万円 × 35% ≒ 約1,270万円
  • 法人税側:約2,200万円 × 35% ≒ 約770万円

これにより、追加で約2,040万円の重加算税が発生し、合計の納税額は:

  • 3,630万円(所得税)
  • 2,200万円(法人税)
  • 2,040万円(重加算税)
    合計7,870万円 にもなる可能性がある。

別の選択肢:貸付金として処理する

このような状況を避けるために、「経費ではなかった支出は、会社から役員への貸付金だった」と処理する方法がある。

この処理を選んだ場合:

  • 否認された金額は、社長の個人所得とみなされず、所得税や住民税はかからない。
  • 会社は経費として計上できないため、約2,200万円の法人税は支払う必要がある。
  • 社長は、会社から借りた6600万円を今後返済していく必要がある(給与や貯金などから返済)。

重加算税などのリスクも低下し、法人側の納税だけで済む点で、税負担は大きく軽減される場合もある。

 


回避前と回避後の金額差

処理方法 法人税 個人の税金 重加算税(仮定) 合計納税額
通常処理(役員賞与) 約2,200万円 約3,630万円 約2,040万円 約7,870万円
回避処理(貸付金) 約2,200万円 なし ほぼなし 約2,200万円

差額:約5,670万円の負担軽減


まとめ

税務調査で経費が否認された場合、その金額を「役員賞与」として処理すると、多額の税金が個人と法人の双方に発生する。加えて、延滞税や重加算税が課されることで、支払い額はさらに膨れ上がる。

しかし、「貸付金」として処理することで、個人の所得税や加算税のリスクを回避でき、税負担は法人税のみに限定される。もちろん、この方法を選んだ場合でも、会社からの借入金である以上、将来的な返済は必要である。

このように、税務署の指摘に対しても、適切な対応を知っていれば、損失を最小限に抑えることができる。税務調査においては、冷静な判断と専門的な知識が重要となる。